この記事では、チャールズ・エリス著『敗者のゲーム』を要約してみました。
経済的自由を目指すうえで、投資の基本となることが書かれています。
投資に行き詰まったときや、迷いが生じたときの道しるべとなる内容で、定期的に確認する必要があると考えたので、備忘録として残すことにしました。
投資に行き詰まった人や、迷いが生じた人に活用して頂ければと思います。
はじめに
もしあなたが、確定拠出型年金に加入したら、その資産運用をどうしたらよいか悩むだろう。この本は、そういう人のために書かれている。
老後の社会保障制度は大きく変わった。確定給付型年金から確定拠出型年金への移行である。
しかし、長期投資の基本原則は変わっていないし、これからも変わることはないだろう。投資の基本原則は揺るがない。
まず資産運用で押さえるべきこと
機関投資家、すなわち投資のプロの運用成績は、『市場』に勝てていない。『市場平均を超える』という目標に対して、プロの運用機関は、全体として市場平均に負けているのである。
機関投資家の大多数が市場平均に勝つことはあり得ない。なぜなら、機関投資家を集めたものが『市場』なのだから。自分自身に勝つことはできないのである。
機関投資家は、投資顧問料や売買手数料などのコストを負担せねばならず、全体としては、最低でもコスト分は市場平均に負けることになる。
『敗者のゲーム』とは
テニスを例にとると、プロは相手の手の届かない所に強力で正確なショットを放ち勝利を掴む。プロのテニスは、勝つために行ったプレーで結果が決まる『勝者のゲーム』である。
一方、アマチュアはミスによって得点を失う。試合に勝つのは相手の失点が多いからだ。アマチュアは、ミラクルショットを狙うのではなく、ミスの少ない堅実なテニスを目指すべきである。つまり、アマチュアのテニスは、敗者がミスを重ねることによって結果が決まる『敗者のゲーム』なのである。
これは、「勝つための最善の方法は、ミスショットをできるだけ少なくすることである」という、週末ゴルファーにとっても当てはまる。
そして、機関投資家ではない私たちの資産運用も『敗者のゲーム』なのである。
私たちが『敗者のゲーム』に参加するのであれば、ミスをしない事が重要である。すなわち、経費率が低いインデックスに連動するファンドを選べばよい。間違って個別銘柄売買に手を出せば、手痛い代償を支払うことになる。
アクティブ運用を行うとき、あなたが相手にするのは市場、すなわちプロの機関投資家なのである。これは『勝者のゲーム』に参加することを意味する。
インデックス投資を行うことで、あなたが『市場』となり、長期的にはほとんどのポートフォリオ・マネージャーを打ち負かす事ができるのである。
タイミングを計ってはいけない
面白いデータがある。過去109年で、ベストの上昇日10日間を逃しただけで、この間の利益の3分の2を失うというのである。たった0.025%の期間で。
『稲妻が輝く瞬間に市場に居合わせなければいけない』
相場のタイミングに賭ける投資は間違っており、決して考えてはいけない。長期的に成功する方法は、ミスを減らすことである。一生懸命やれば、それだけリターンが増えるというわけではないし、リターンを増やそうとしてより高いリスクを取れば、危険性もそれだけ高まる。
年収益率 | 年収益率の比率 | |
S&P500 | 11.1% | |
ベストの10日を 逃した場合 | 8.6% | −22.6% |
ベストの20日を 逃した場合 | 6.9% | −37.2% |
ベストの30日を 逃した場合 | 5.5% | −50.5% |
この年収益率に複利の力が働くのだ。期間が長くなればその影響は計り知れない。
インデックス・ファンドは、投資の『ドリームチーム』
今日の市場環境におけるインデックス・ファンドの優れたメリットを整理してみよう。
- 低コスト。運用報酬は、年率0.2%以下。
- 売買頻度が低いため、売買手数料が少なくて済む。利益確定しないため、税金も少なくて済む。
- 運用実績を管理する必要がないため、手間がかからない。
- 分散投資のため、致命的なミスをおかす心配がない。
- 運用目的、長期投資方針といった最重要課題にだけ専念できる。
上場投資信託(ETF)
インデックス・ファンドに代わるものとして考える価値のあるものとして上場投資信託がある。
メリットとして、運用報酬が低いことがある。一方、デメリットとして、証券会社の売買手数料がかかる。だから、定期積立投資する小口投資家の場合はインデックス・ファンドの方がよい。
大きな差はないが、ETFは1993年に誕生して以来、証券会社などのプロの短期的なリスクヘッジ目的によって拡大してきた、ということは理解しておいたほうがよい。
インデックス・ファンド
投資のドリームチームを選ぶとしたら、どんなメンバーがふさわしいだろう。ウォーレン・バフェットや、チャーリー・マンガー、ピーター・リンチ、ジョージ・ソロスも入るだろう。せっかくだから、ウォール街のトップアナリストを全部加えよう。
インデックスファンドは市場をそっくりそのまま再現する。市場の動きはプロの動きの総和を示す。つまり、インデックスファンドを使えば『ドリームチーム』のメンバーを抱えるのと同じメリットが得られるのである。
運用につきまとう矛盾
資産運用で目標とすべきは、適切な資産配分の確立である。
株式600万円・債券400万円の資産配分を、株式700万円・債券300万円にシフトしたとしよう。債券の利回りが3%、株式のリターンが7%と仮定すると、シフト前は年間54万円、シフト後は年間58万円を得ることになる。資産全体のリターンは、0.4%上昇する(4%のリターン差✕10%)。
株式の個別銘柄選択の成功によって、これだけの成果をあげ続けられた機関投資家はほとんどなかった。運用機関の大多数が「市場に勝つ」といった無意味で、難しいだけの試み(銘柄選択)に大部分の時間を費やしているのである。
繰り返す。資産運用で目標とすべきは、適切な資産配分の確立である。
なぜ運用基本方針が必要か
投資家は長期の運用基本方針を策定しておくべきである。
最大の理由は、投資家のその場しのぎの方針変更からポートフォリオを守るためである。
周りがパニックに陥ると、自分も冷静な判断力を失いやすい。自分だけが冷静でいられるなどとは思わないほうがよい。あなただって人間だ。
このことは、ときに市場が大暴落することが証明している。
個人投資家への助言
あらゆる投資家は、過小評価された共通の敵を持っている。それは、インフレーションという恐るべき敵である。
インフレは、特に引退後の投資家に打撃をあたえる。
年率2%のインフレが続けば、購買力は24年で半減する。年率4%のインフレなら、購買力は15年以内に半減する。次の15年で更に半減する。これは重大問題である。特に引退して、インフレによる購買力の減少を埋め合わせるだけの収入の道がない場合にはなおさらである。
個人投資家のための十戒
これから述べる個人投資家のための十戒は、あなたが投資の意思決定を行っていくうえで役に立つだろう。
- 貯蓄すること。そして貯蓄したものを将来のために投資すること。
- 相場の先行きに賭けない。相場を見ながら行う売買の相手は、プロであることを自覚する。(タイミングを測ってはいけない)
- 税務上有利と言う理由で動いてはいけない。損金を節税目的で商品化したものは、証券会社を手数料で儲けさせるだけである。
- 自分の住宅を投資資産と考えてはいけない。住宅は家族と生活する場所であり、それ以上のものではない。
- 商品(コモディティ)取引をしてはいけない。コモディティ取引は、価格変動の投機にすぎない。経済的付加価値を生まない以上、投資とは言えない。
- 証券会社の担当者を信用してはならない。彼らの仕事はあなたを儲けさせることではなく、あなたから儲けることなのだ。
- いわゆる新金融商品に投資してはならない。この手の商品は、投資家に保有されるためというより、投資家に売るために設計されている。
- 債券に投資してはいけない。債券は、長期運用にとっての真のリスクであるインフレに弱い。
- 投資家は長期の運用基本方針を策定し、それに沿って行動すること。
- 直感を信じて投資してはいけない。投資したら何もしないことだ。売買は運用のプラスアルファの部分にすぎない。
複利の効果
中東のおとぎ話がある。
王様が帝国の危機を救った将軍に、何でも望みどおりの褒美をとらそうと言った。将軍は遠慮深く、チェッカー盤(縦横8マス)の1マス目に小麦を1粒、2マス目に2粒、3マス目に4粒、4マス目に8粒と順番にマス目を埋めてください、とだけお願いした。王様は、莫大な褒賞を与えずに済みそうだと思い、喜んでこの提案を受け入れた。不幸なことに王様は、複利の恐るべき力を知らなかった。小麦1粒からでも64回倍増させれば際限なく膨れ上がる。チェッカー盤を埋めていった小麦の総量は、帝国全体の富をはるかに超えるものであった。アッラーの前での名誉を守るため、王様は帝国の全てを将軍に差し出さねばならなかったという。
これは、複利の効果が富の実質価値を増加させることだけを意味するものではない。
インフレが富の実質購買力を容赦なく破壊していくことをも意味している。
投資資金の調達
投資資金の調達のカギは貯蓄だ。支出をできるだけ抑え、少しでも先に延ばすことが貯蓄の基本である。
収入がいつか支出を上回るだろうと期待している人は、魔法を信じているようなものだ。
定期的にお金を積み立てることにより「他人様よりまず自分自身に支払え」ということである。ドル・コスト平均法で投信を買い、あるいは銀行口座からの自動引き落としや給与天引きで毎月一定額を積み立てる仕組みは、なかなか優れた方法である。
生涯を通じた投信プランを立てよう
投資家は、五つの未知数を持ったパズルを解かなければならない。五つの未知数とは次のとおりである、
- 運用利回り
- インフレ率
- 必要支出額
- 税金
- 運用期間
多くの投資家が、この一連の作業の中で最も難しいと考えている、投資の長期平均期待収益率の予測方法について、簡単な解決法を説明しよう。
超長期平均年間収益率
第一に、各資産のインフレ調整後の超長期平均年間収益率を次のとおりと見る。
- 株式 : 4.5%
- 債券 : 1.5%
投資の意志決定のルール
第二に、最も重要な投資の意志決定のルールは、次の二つであることを理解する。
- 10年以上運用する資産はすべて株式に投資する。
- 2〜3年以内の運用資産は「現金」ないしマネーマーケット資産に投資する。
運用資産の一覧表
第三に、以下の三つの運用資産の一覧表を用意することである。
- 株式、債券への投資残高
- 住宅の実質価値
- 個人年金、退職制度に基づく貯蓄残高
引退後の収入
第四に、引退後の収入を確認する。主な収入源は次の三つだろう。
- 年金給付
- 社会保険
- 資産の運用収益
長期の方針を十分に検討したうえで決定したら、それを尊重して守っていくべきだ。じたばたしないことが大事である。
人生の終盤で成功するために
自分自身の生涯の必要と欲望を満たす以上の資産を形成したら、適切に使わなければならない。
投資
教育は最高の投資だ。教育は、将来長期にわたって収入を増やす力があり、生活を豊かにし、人生の選択の幅も広げる。自分自身の子や孫の教育だけでなく、教育資金をまかなえない家庭の子供を支援する方法もある。
もう一つは健康への投資だ。適度な運動、体重コントロール、禁煙などだ。健康であれば寿命が延び、医療コストも減らすことができる。
遺産
世界最高の資産家の二人は、子供にあまり残さないと決めている。
ウォーレン・バフェットは、「子供に残す理想的な金額は、したいと思うことを何でもできる額であり、何もしなくてよいと思わせてはいけない」と言う。
ビル・ゲイツも同意見だ。「わたしが財産を社会にお返しし、子供にはその一部しか残すべきではないと考える理由の一つは、それが子どもたちにとってよいことだと思うからだ」。
資産家のためのアドバイス
大資産家に対しては、様々な業者が投資資金を出させたい一心で、実に魅力的な顔をして殺到する。そうした人たちに会うのは心地よいが、彼らはあなたの財産が目当てなだけだ。
あなたが大資産家なら、資産管理のための専門家のアドバイスを求めたほうがいいだろう。おすすめは、大規模な財団や企業年金に属している運用のプロだ。報酬は高いが、大きなミスを避け、的確な判断が得られるならば安いものだ。
敗者のゲームに勝つために
運用の責任者は、運用機関ではなく投資家自身である。
投資家は、自身のリスクに対する精神的な許容度、マーケットの歴史を把握しておく必要がある。そうすれば、「どこかに市場平均に大きく勝つような運用機関が存在するはずだ」という幻想から逃れることができる。
投資とは『敗者のゲーム』である。唯一ゲームに勝つ方法は、他の運用機関のミスに、誰よりも早く乗じることである。したがって、ほとんどの投資家は思うような結果を出せない。
しかし、『敗者のゲーム』に勝つ方法もある。それは、そもそもプレーしないことである。
投資の本来の目的は「市場平均以上のリターンをあげる」ことではない。「自身の現実的な運用目的を達成するために、最適な投資を実践すること」なのである。
底辺社畜の読書感想文
社畜が、この本を読んだ感想です。
この本の序文に、「意図するところはニ〜三ページにわかりやすくまとめられている」と書かれています。
まさにその通りで、投資方針は簡単に決めることができました。
現在はこの本に書かれたとおりの投資計画を実行できていると思います。すなわち、
しかし、それだけでは自身で作った投資計画を、「いかなる環境の下でも実行し続ける強い信念を培うことはできない」とも書かれています。
社畜は、2020年3月頭に投資を始めました。直後にコロナショックという大暴落があり、その後は右肩上がりです。
つまり、自分自身のリスク許容度を把握できていません。
次の大暴落がきたときに、うろたえずに淡々と積立を続けることができれば、成長できたということでしょう。
社畜の運用目的は変わりません。60歳までに経済的自由を達成することです。
コメント