20代の頃は、全く気にしなかった年金。40代半ばにもなると、とても気になります。
以前の記事で、老齢厚生年金の簡易計算法をご紹介しました。
老齢厚生年金の受給額は分かりました。では、果たして厚生年金は、お得なのでしょうか?損なのでしょうか?
この記事では、支払う保険料と受け取る年金額から、厚生年金が損なのか得なのかを検証していきます。
厚生年金は、損か?お得か?
まず大前提として、社畜は給与から厚生年金保険料を源泉徴収されるので、支払わないという選択肢はありません。
経済的自由を目指すにあたって、いろいろな書物を読んでみましたが、厚生年金については、お得だという意見と、損だという意見が分かれています。
損だ!という意見
まずは、損だという意見です。
Amazonのビジネス書のランキングで上位に出てくる、『両@リベ大学長』著『お金の大学』では、公的年金に否定的な意見が書かれています。
youtubeで動画も見ましたが、『厚生年金は入った方が得なのか?』というタイトルで、「毎年保険料は上がり続け、受給額は下がり続けているから損だ」と断言しています。
「今後も保険料は上がり続けるだろうし、少子高齢化が進行して、受給額は下がり続けるだろう。将来受給できるかすら分からない。」とまで言っています。
社畜も一部同じ意見で、年金の受給額は、減り続けるだろうと思います。
ただし、一部誤りがあります。厚生年金保険料率は、この動画が作成された2019年以前の2017年9月に18.3%に固定されており、18.3%で固定されることは2004年に決定されていました。
今後どうなるかは分かりませんが、少なくとも2021年6月現在、3年以上保険料率は変わっていません。
得だ!という意見
つぎは、得だという意見です。
こちらもビジネス書では有名な、『橘玲』著『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』には、公的年金に肯定的な意見が書かれています。
「国民年金は、平均寿命で考えたとき、支払う保険料より、受け取る年金額の方が大きい」、「男性で1.5倍、女性は2.1倍」と言っています。
一方で、厚生年金は、「国民年金の赤字の穴埋めをしているから、支払う保険料より、受け取る年金額は少ない」と言っています。
ただし、「厚生年金保険料は、会社と労働者が折半して支払う。労働者が支払う折半の保険料より、受け取る年金額は大きいから、たくさん支払った方が得だ」と言っています。
自分が支払う保険料と同じ額を会社が支払ってくれるわけですから、社畜もそのとおりだと思います。
厚生年金は損か、得か、どちらも一理あるようで判断できません。
では、実際に、支払う保険料と受け取る年金額を試算してシミュレーションしてみましょう。
厚生年金は、支払う保険料と受け取る年金額、どちらが多い?
それでは、実際に、支払う保険料と受け取る年金額を試算してシミュレーションしてみましょう。
支払う保険料はいくら?
まずは、支払う保険料から計算してみましょう。
保険料率は、『標準報酬月額』の18.3%です。ただし、半分は会社が支払ってくれるので、会社員が負担するのは9.15%です。
厚生年金保険料率 9.15%
『標準報酬月額』は、下限が『88,000円』、上限が『650,000円』です。
計算を簡単にするために、20歳から60歳までの40年間、厚生年金に加入したとします。支払う保険料の下限は、
88,000円✕9.15%✕480ヶ月=3,864,960円
上限は、
650,000円✕9.15%✕480ヶ月=28,548,000円
となります。
3,864,960円〜28,548,000円
受け取る年金額はいくら?
つぎは、受け取る年金額を計算してみましょう。
受け取る年金額の計算は、以前の記事で紹介していますので、詳しくはそちらをご参照下さい。
支払う保険料と同じ条件でないと比較ができないので、20歳から60歳までの40年間、厚生年金に加入したとして試算します。受け取る老齢厚生年金額の下限は、
88,000円✕0.005481✕480ヶ月=231,517円
上限は、
650,000円✕0.005481✕480ヶ月=1,710,072円
となります。
231,517円〜1,710,072円
20歳から60歳までの40年間、厚生年金に加入したとすると、老齢基礎年金も満額の780,900円を受け取れるので、老齢年金の総額は、下限で、
231,517円+780,900円=1,012,417円
上限は、
1,710,072円+780,900円=2,490,972円
となります。
1,012,417円〜2,490,972円
この年金額を、65歳から一生涯受け取れます。
日本人の平均寿命は、厚生労働省の「簡易生命表(令和元年)」によると、『2019年の日本人の平均寿命は、男性が81.41歳、女性が87.45歳』となっています。
受給額に平均寿命を掛けると、男性の下限は、
1,012,417円✕(81.41歳ー65歳)=16,613,763円
女性の下限は、
1,012,417円✕(87.45歳ー65歳)=22,728,762円
男性の上限は、
2,490,972円✕(81.41歳ー65歳)=40,876,851円
女性の上限は、
2,490,972円✕(87.45歳ー65歳)=55,922,321円
となります。
16,613,763円〜40,876,851円
22,728,762円〜55,922,321円
支払う保険料と、受け取る年金額、どっちが多い?
20歳から60歳までの40年間、厚生年金に加入した場合に、支払う保険料と、受け取る年金額の上限・下限が分かりました。
結果は、計算するまでもなく、受け取る年金額の方が多いです。
せっかくなので、倍率を計算してみましょう。
男性の場合、下限は、
16,613,763円÷3,864,960円=4.29倍
上限でも、
40,876,851円÷28,548,000円=1.43倍
となります。
女性の場合、下限は、
22,728,762円÷3,864,960円=5.88倍
上限では、
55,922,321円÷28,548,000円=1.96倍
となります。
- 男性 1.43〜4.29倍
- 女性 1.96〜5.88倍
では、なぜ厚生年金は損だという意見と、お得だという意見が分かれるのでしょうか?
答えは、立場の違いです。
『両@リベ大学長』氏は、経営者です。そのため、会社が負担する保険料を考慮しているのだと思います。そうすると、倍率が2倍未満であれば、支払った保険料の方が、受け取る年金額よりも多くなるわけです。当然、『損』になりますよね。
一方、『橘玲』氏は、会社員の立場で考えています。そうすると、前述のとおり、支払った保険料より、受け取る年金額の方が多くなるわけです。当然、『得』ですよね。
そして、社畜は底辺の会社員です。社畜の立場としては、厚生年金は、『得』ということになります。
まとめ
この記事では、厚生年金は、お得なのか?損なのか?について、支払う保険料と受け取る年金額から検証しました。
結果は、社畜のような会社員の立場であれば、『お得』と言うことになります。
支払った厚生年金保険料に対して、受け取る年金額は、1.43〜5.88倍にもなります。
大前提として、会社員は、給与から厚生年金保険料を源泉徴収されるので、支払わないという選択肢はありません。
それでも、厚生年金を支払ったからといって、平均的に損をする事はありません。
支払った保険料が多ければ、受け取る年金額も多くなるので、たくさん支払った方がお得です。
そのお得になる秘密は、『厚生年金保険料の半分を、会社が会社が支払ってくれているから』というのが結論になります。
社畜万歳!
しっかり会社に尽くして、できる限り年金を増やしたいね。
会社としては辛いだろうけど。
もちろん、年金だけで生活するのは難しいです。
65歳までに、しっかりと資産形成をして、老後に備えることが大切です。
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