それ、詐欺ですよ。ポンジスキーム被害はなぜ続くのか?

経済的自由

どーも、経済的自由を目指して節約と投資に励む底辺の社畜です。

投資詐欺がなくなりませんね。

投資詐欺のほとんどは「ポンジスキーム」と呼ばれる手法が原型となっています。

ポンジスキームとは、詐欺師チャールズ・ポンジの名に由来する投資詐欺の手口です。

どういった詐欺手法かを要約すると、投資話を持ちかけて出資金を募るが、実際には運用せずに出資金を持ち逃げする、という手口です。

奥さま
奥さま

こんな簡単な詐欺に騙される人がいるの?

社畜
社畜

最初は、出資金を使って配当金を出すから、出資者は信用しちゃうんだよね。

で、さらに出資金を上積みしちゃうんだよ。

奥さま
奥さま

そして、出資金が限界まで膨らんだところで持ち逃げか。

社畜
社畜

そう。

簡単に言えば、自転車操業だね。

これから、ポンジスキームがどういったものか、わかりやすく、小説風にしてみました。

最後に、ポンジスキームの見分け方や、騙されないためにはどうすれば良いかも解説していますので、ぜひ参考にしてください。

ポンジスキーム

それでは、ポンジスキームを使った具体的な詐欺の手口を見ていきましょう。

まずは、それっぽい投資対象を決めるところから始まります。

今回は、「超富裕層向けのプロ投資家に運用してもらえる権利」ということにしましょうか。

主要な登場人物は、

A : 大学を卒業してから38年間勤めた会社を定年退職したばかりの60歳の男性。専業主婦の妻と子どもが二人いるが、子どもは二人とも独立し、今は夫婦の老後資金だけを心配すればよい状況。豪華客船で世界一周クルーズするのが夢。

P : 米国大手銀行のバンカー。日本人だが米国に永住している。依頼主から日本の富裕層とのコネクションを作るように依頼され、数ヶ月日本に滞在することになった。

第一章

「このプロ投資家は、お金が有り余っている100億円以上の資産家の資産を運用するのが仕事です。

資産が100億円未満の貧乏人は、相手にもしません。このプロ投資家は、世界中のあらゆる投資を熟知しており、コネクションもあります。

例を挙げると、ある資産家がAI(人工知能)開発のスタートアップ企業の創業者兼開発者に出資しており、この企業の未公開株を大量に保有しています。この企業が新規上場をすることになりましたが、上場基準を満たすためにある程度の株を手放さなければならなくなりました。このプロ投資家は、資産家から未公開株の買い手を探してほしいと頼まれました。株式が公開されれば、低く見積もっても新規公開予定価格の3〜5倍の値をつけることは間違いありません。資産家は、新規公開予定価格で売却しても10倍以上の利益を得ることができます。上場基準を満たすために、プロ投資家は、できる限り多くの人に分割して売却しなければなりません。

他にも、このプロ投資家は、CIAから極秘情報を入手することができます。例えば、R国が、戦争を仕掛けようとしているという情報を得ました。R国は、インフレ(R国の通貨の価値が相対的に下がる)になることが予想されるので、R国通貨を事前に売っておけば、大儲けすることができます。また、米国の武器が大量に売れるので、軍需産業株を購入しておけば、やはり大儲けすることができます。

このように、このプロ投資家には情報が集まる仕組みとコネクションがあるので、超富裕層は、こぞって彼に運用をお願いしたがるのです。

もちろん彼の報酬は、運用資産の年率10%というとんでもない額です。しかし、彼のこれまでの投資のリターンは、年率平均で50%を上回っています。

申し遅れました。わたしはこういう者です。」

Pは、米国の銀行名が書かれた名刺を渡しながら、自分はバンカーだと自己紹介した。

話は、少しさかのぼる。

ここは、日本のメガバンクが主催する定年退職者向けセミナーの会場だ。「老後資産が枯渇すると、惨めな最期を迎えることになりますよ。」と、銀行員になかば脅されるような形でAはこのセミナーに参加していた。

もちろん銀行員は、Aたちの退職金が狙いだ。自分の銀行で投資商品を買わせて手数料を手にすることがこのセミナーの目的だ。

Aは、これまで貯蓄や資産運用をほとんどしてこなかったため、退職金以外にまとまった資産はほとんどない。唯一と言っていい資産は、35年で組んだローンがあと10年残っているマイホーム位だ。そのマイホームも大規模修繕が必要な時期となり、退職金の一部を使わなければならないと考えているところだった。

今日のセミナーで投資の話を聞き、修繕費用はローンを組んで、投資の配当金で返済していく方法があることを学んだ。

「ああ、それはタコ足配当ですよ。運用成績によらず、定額の配当金を受け取れることになっているでしょ?満期を迎えたときに元本は一体いくら残っていますかね。」

Pは説明した。新設された投資信託なのでリターンは不明。手数料は運用期間中に年率3%取られるだけでなく、購入時に1%取られることになっていた。それでいて、購入金額の2%が毎月配当金として支払われることが決まっている。

「なるほど。うまい話はありませんね。やはりマイホームの修繕は、退職金でやるしかないですね。」

Aは、お礼を言ってPの元を離れようとした。

「もう少し話をしませんか?もしかしたら、Aさんのお役に立てる話ができるかもしれません。」

Pは、Aを呼び止めた。そして、沢山の人に聞かれてはいけないから、とAを近くのカフェへと案内した。そして、2人分のコーヒーを持って席に着くと、プロ投資家について話し始めた。

「……。申し遅れました。わたしはこういう者です。」

第二章

Pは、米国の銀行名が書かれた名刺を渡しながら、自分はバンカーだと自己紹介した。

「普段は米国に居るのですが、プロ投資家の依頼で日本の富裕層のコネクションを作るために、特別に日本で出資者を募ることにしたのです。」

Pは、さすが海外のバンカーだけあって、ゼニアのスーツにパテック・フィリップの時計、ジョンロブのシューズと一分の隙もない。

「先程のタコ足配当の投資信託ですが、毎月2%の配当金が出るということは、年率で24%です。元本が目減りするのは当然です。」

Pの説明を聞きながら、Aはがっかりしながら苦笑いを浮べた。

「恥ずかしながら、この年まで資産運用など全くしたことがなくて。退職金の3000万円を運用すれば毎月60万円貰えると聞いて、これならマイホーム修繕のローン返済だけでなく、苦労をかけた妻と一緒に世界一周クルーズ旅行もできるじゃないかと思ってしまった所です。」

Pは、少し険しい顔になりながらもAに話の続きを促した。

「退職金は、1000万円をマイホームの修繕に充てて、残りは老後資金として銀行の普通預金にでも預けることにします。」

Pは、しばらく目を閉じたまま黙っていた。そして、ゆっくりと目を開きながらAに優しく話しかけた。

「あなたは素晴らしい人だ。あなたのように社会と家族に貢献してきた人が、なんの楽しみもなく人生を送らなければならないなんて、この国はどうなっているんだ。」

徐々にPの声に熱がこもっていく。

「いま、富裕層と貧困層の格差が広がり続けていることはご存知ですね。なぜ格差が広がるのか分かりますか?それは、富裕層にだけ更に富をもたらす情報が集まるからです。」

Aは、気圧されながらもPの話に引き込まれた。

「先程、プロ投資家への出資者を探しに日本に戻ったとお話しましたね。プロ投資家が、資産100億円超えの富裕層とのコネクションを求めているからです。この投資案件は、毎月出資金の1.5%を配当金として受け取ることができます。年率で18%、そしてもちろん元本保証です。いつでも出資金を引き上げることができます。もちろん出資金の引き上げの手続きには5、6ヶ月の時間はかかりますがね。また、プロ投資家が何に投資しているかは極秘です。こういった情報は、富裕層にしか届きません。」

Aは話が飲み込めずに、Pに質問をした。

「わたしには100億円を超える資産なんてありません。なぜ、こんな話をされるんですか?」

Pは、優しく答えた。

「あなたの人柄に惹かれたからですよ。わたしは、プロ投資家から出資金の受け入れ枠を500億円配分されています。もし、あなたが希望されるなら、特別に受け入れ枠を融通しますよ。」

Aの気持ちは傾いていたが、さすがに今日会ったばかりの人に、生命線ともいえる退職金を託すことに臆してしまうのは当然の感情であろう。

「大変ありがたいお申し出なのですが、少し考えさせてください。今日は、セミナーなど色々とあったものですから頭の整理ができていなくて。」

Aのやんわりとした拒否に対して、Pは全く気にした素振りを見せなかった。

「当然ですよ。考えた結果、断ることになっても全然気にされることはありません。ただ、一点だけ申し上げておきます。わたしに与えられた出資金の受け入れ枠は500億円分しかありません。埋まってしまった後ではどうすることもできませんので、もしわたしからお断りすることになってしまったら、その時はご容赦ください。」

Pの笑顔にAは安心した。そして、Pの名刺を大事に仕舞いながら席を立ち、家路についた。

第三章

その日、家に戻ったAは、妻にPの名刺を見せながら今日あったことを話した。妻は、「わたしは、よくわからない。あなたが考えたとおりにしたら。」と、言ってくれた。

Aは色々考えたが、もともと投資に対する知識がないので、答えを出すことができない。ただ、何もせずにいれば退職金は少しずつ消費され、長生きをしてしまった場合に枯渇してしまうことだけは分かっていた。

翌日、Aは別のメガバンクの投資セミナーに参加していた。結局、昨日は答えを出せないまま朝を迎えた。そこで、もともと予定が入っていた投資セミナーで、他の参加者にAの投資話について相談してみることにしたのだ。

セミナーでは、講師の銀行員が相変わらず長生きのリスクをまくし立てていた。

Aは、右隣りに座っていた同年代の定年退職者と思われる男に話しかけてみた。

「資料を見たところ、これは所謂タコ足配当の投資信託のようですね。」

突然話しかけられた右隣の男は、少し驚きながらも、

「そうですね。これでは手数料だけで退職金が食い潰されてしまう。普通預金にでも預けたほうがまだマシですね。」

と答えた。Aが頷いていると、こんどは左隣の男が話しかけてきた。

「わたしたちを儲けさせてくれる投資話が向こうからやって来ることなんてありませんよね。ところで、バンカーという存在を知っていますか?バンカーとは、資産運用のエキスパートのことです。銀行は、わたしたちのような貧乏人には粗悪な商品を売りつけて手数料をせしめておきながら、富裕層には優秀なバンカーを充てがって資産運用をさせるそうですよ。貧乏人はますます貧乏に、富裕層はますます裕福になるって訳ですわ。」

Aは、バンカーという言葉を聞いて驚いた。しかし、驚いた顔を必死に隠した。

右隣の男は、

「わたしたち貧乏人にもタコ足配当商品ではなく、バンカーによる資産運用をしてくれれば喜んで退職金をお任せするんですがね。」

と苦笑しながら言った。Aは、おそるおそる聞いた。

「バンカーとはそんなに凄いのですか?米国のバンカーは日本のバンカーと比べてどうなんでしょうか?」

左隣の男が身を乗り出してきて言った。

「米国のバンカーなんて雲の上の存在ですよ。世界トップの資産家は、みんな米国のプライベートバンカーに資産管理させているそうですよ。」

右隣の男もAの顔を覗き込んできて言った。

「まさか、お知り合いでもいるんですか?わたしにも紹介していただけませんか?」

Aは、心臓が飛び出るほどドキドキしながらも愛想笑いを浮かべ、

「わたしのような庶民にバンカーの知り合いがいるわけないでしょう。わたしが紹介してほしい位ですよ。」

と応えるのが精一杯だった。

その後のセミナーや二人の話は、Aの頭には全く入らなかった。「早くPに連絡を取らなければならない。」そのことばかりを考えていた。

セミナーが終わり、Aは二人と連絡先を交換した。そして、銀行員からの営業トークを振り切って足早に家路についた。

家に着くと、AはすぐにPに連絡した。

「Pさん。連絡が遅くなってしまって申し訳ありませんでした。昨日の件ですが、まだ間に合いますでしょうか?」

Pは、相変わらず安心感のある優しい声で答えた。

「ははは。一日、二日で動く話ではありませんよ。今、商談中でして、そうですね、夜でしたら時間が取れますが、22:00に〇〇ホテルのラウンジはいかがですか?」

Aは、こんなに早くアポがとれるのかと少し拍子抜けしたが、妻と話しながら約束の時間を待った。

妻は、Aが家の修繕計画のこと、世界一周クルーズに行きたいことなどを嬉しそうに話す姿を見て、幸せを感じていた。

これで全てが上手くいくのだ。

Aは、仕事一筋だった38年を振り返り、これは神様がくれたご褒美なのだと思った。

そんな人間は沢山いるのに、自分だけになぜ特別な機会が訪れたのか、Aはこのとき全く疑問を持たなかった。

少し早く〇〇ホテルのラウンジに到着したAは、ビールを注文し窓の外を眺めていた。ただ、Aの目に映っていたのは綺羅びやかな夜景ではなく、遥か向こうの海に浮かぶ豪華客船に妻と二人でくつろぐ自分の姿だった。

「すみません、遅れてしまって。」

5分ほど遅れてPが席についた。

「お詫びにご馳走させてください。」

Pはそう言ってサントリー山崎18年をダブルで2つ注文した。

「とんでもない。お忙しい中時間を作っていただいて、こちらこそありがとうございます。」

Aは恐縮しながら答えた。乾杯して、山崎18年を口に含み、舌で転がした。さすがは日本が世界に誇る山崎だ。舌の様々な部位に触れ、甘味・渋味・辛味・酸味・苦味をしっかりと感じることができた。

「先日の出資の話なのですが、1000万円は当面の生活費として普通預金に、1000万円はマイホームの修繕費用などの予備費として残しておき、残りの1000万円を出資させていただきたいのですが。あなたにとっては微々たる金額でしょうが。」

Aは、申し訳無さそうに申し出た。2つの投資セミナーに参加し、Aが得たものは、とにかく分散投資が安全だという知識だった。元本保証で、毎月1.5%の配当金が受け取れるのであれば15万円の収入ということになる。65歳までアルバイトで月10万円程稼げば充分に暮らしていける。そして、ねんきん定期便によると65歳で年金の支給が開始されれば、2ヶ月に一度30万円が振り込まれる。月額15万円だ。配当金と合わせれば、月収30万円だ。ここまでは来れば普通預金で残しておいた1000万円で、世界一周クルーズへ出航という訳だ。

「わかりました。では、こちらの預託申込書をご記入ください。1000万円については、こちらの口座に振込をお願いします。運用開始は、2ヶ月後となり、3ヶ月目から配当金が振り込まれます。」

Pは、Aに預託申込書の記入を促しつつ説明を続けた。そして、記入が終わりかけた頃、Pが少し低い声で尋ねてきた。

「Aさん、この投資はAさんだけに特別にお話しした事です。他の誰にも話してはいませんよね?」

Aは、ドキッとしながら答えた。

「妻以外には、誰にも話していません。もちろん、妻にも口外しないよう念を押してあります。」

というのも、Aはセミナーで出会った二人に、この投資話を教えたいと思っていたからだ。

「本来、わたしの顧客は100億円以上の資産を持つ富裕層だけです。当然、出資金も10億円以上でしかお取り扱いしていません。少額では、事務手続きに余計な手間が増えてしまうからです。Aさんの出資金は、他の出資者の出資金に紛れ込ませる形で、依頼人に報告する予定です。くれぐれも他の人には内密にお願いしますよ。」

Pの覗き込むような目と低い声に、Aはたじろぎながら頷いた。

終章

翌日、Aは、Pに指定された口座に1000万円を振り込む手続きを行った。インターネットバンキングでは、1日100万円までしか振り込めないため、わざわざ銀行の店頭で手続きを行った。

その後、アプリでアルバイト募集を探しながら、Aは暗い気持ちになっていた。というのも、アルバイトの時給は1000円程度で、月に10万円を稼ぐためには、週に5日4時間働く必要があったからだ。この生活を、あと5年続けなければならないと考えると気が重くなるのも当然だろう。

しかし、やるしかないのだ。Aは、アルバイトの面接を、いくつか申し込んでいった。

3ヶ月後、Aは働いていなかった。

Aが始めたアルバイトは、飲食店だった。すぐに慣れると思っていたが、実際にはなかなか仕事が覚えられない。何度も20歳代のアルバイトに怒られるうちに、Aは限界を迎えてしまったのだった。たったの2ヶ月で。

また、アルバイトを辞めたことを、Aは妻に話していなかった。話せなかった。

こんなことなら、定年退職後に失業保険を申請しておけば良かった。2ヶ月のアルバイトで基本手当日額が下がってしまったため、今から基本手当を受けると不利になってしまうのだ。

今月の生活費を普通預金から引き出すために銀行のATMに向かったAは、残高を見て驚いた。

投資の配当金が振り込まれていたのだ。ぴったり15万円。

アルバイトは、あんなに苦労して10万円。配当金は、何もせずに15万円。

もうAに一切の迷いは無くなっていた。

Aは、すぐにPに連絡した。Pは、すぐに電話に出た。

「どうしました、Aさん。」

「Pさん、少しお時間を頂けないでしょうか?」

Pは、Aの剣幕に驚いた様子だったが、すぐに会う時間を作ってくれた。

待ち合わせのカフェにAが到着したとき、すでにPは席に着いていた。

「先日、配当金が振り込まれていました。ありがとうございました。」

なんだ、そんな事かと胸を撫で下ろすようにPは答えた。

「そんな当たり前のことの為に呼び出したんですか?あなたの出資に対する配当金です。お礼を言われるような事はありませんよ。」

「じつは、申し上げにくいのですが…」

Aが言葉に詰まっていると、Pは優しく先を促した。

「どうしたんです。何かお困り事ですか?」

Aは意を決して続けた。

「出資金を追加することはできますか?あと2000万円出資させてください。」

コーヒーが運ばれてきた。

「思ったより早かったな。」

「えっ?」

Aは、聞き返した。

「コーヒーの到着ですよ。」

Pは答えた。そして、

「わかりました。お受けしましょう。でも、これが最後です。わたしの依頼主が希望する額の出資が間もなく集まりますので。」

Aは、間に合った安堵で身体の力が抜けていった。そのまま預託申込書を記入し、出資金の振込先を確認してから店を出た。

そして次の日、3ヶ月前と同じように、銀行の店頭から今度は2000万円の振込手続きを行った。銀行員からは、しつこくタコ足配当の投資信託を勧められたが、Aはきっぱりと断った。

こんな詐欺まがいの商品を売りつけるなんて、銀行の倫理観はいったいどうなっているんだ、と内心憤りながら。

当面の生活費は、カードローンで賄うことにした。もちろん妻には内緒だ。ただ、アルバイトを辞めたことも内緒なので、Aはやむなく毎日10時に家を出てハローワークで表面的には求職活動を行った。配当金が支払われるまでのつなぎとして失業保険を貰うためだ。

そして翌月、Aの口座には配当金15万円が振り込まれた。

翌月には、また配当金15万円が振り込まれた。

その翌月。今月からAの口座には、毎月45万円の配当金が振り込まれることになっている。

Aが残高を確認したところ、まだ振込がされていない。

「振込日を間違ったかな。」

Aは、キャッシュカードを取って家に戻った。

Aは次の日、銀行のATMで再び残高を確認した。やはり配当金は、振り込まれていない。45万円どころか15万円すら振り込まれていない。

Aは、急いでPに電話をかけた。

「…現在、使われておりません。」

電話は単調なアナウンスを繰り返した後に切れた。

Aは、何が起こったのか全く分からなかった。いや、分かっていたが、分かることをA自身が拒否していた。

それから、どのようにして家に帰ったのかは記憶がない。

妻がAに話しかけているが、Aの頭には全く入って来ない。

Aに残されたものは、ローンが10年残った大規模修繕が必要なマイホーム、カードローンの返済、一ヶ月の支出には満たないが150日間支給される失業保険だけだった。

いや、今まで支えてくれた妻が残っている。

つけっぱなしのテレビには、アナウンサーが神妙な面持ちで投資詐欺のニュースを読み上げる姿が映っている。画面が切り替って、そこにPの顔が映された。Aにとっては残念なニュースだが、その顔の下に表示された名前は、Pではなかった。

それ、詐欺ですよ

奥さま
奥さま

衝撃的だね。

でも、自分だったらさすがに騙されないかな。

社畜
社畜

みんなそう思ってるんだよ。

でも、詐欺は無くならないし、毎年たくさんの人が騙されているんだよね。

奥さま
奥さま

詐欺師なんかに、大切なお金を奪われたくないよ。

社畜
社畜

大丈夫。

対策はあるよ。

それでは、ポンジスキーム詐欺への対抗策をご紹介しましょう。

結論から言うと、ポンジスキームであることを見抜ければ、詐欺に引っかかることはない、という訳です。

では、どうやってポンジスキームを見抜くのか?

日本でもポンジスキームを使った詐欺が、数多く報告されています。

報告された手口を注意深く見てみると、そこには、いくつかの共通点が見えてきます。

1つ目の共通点は、「年率10%超えの安定的な利益を謳っている」ということです。

投資において、年率10%以上の利益が出ることはあり得ます。しかし、安定的に10%以上の利益が継続して出続けることはあり得ません。安定的に10%以上の利益が出る、と言われたら詐欺を疑いましょう。ちなみに、投資の神様ウォーレン・バフェット様の過去50年間の平均リターンは、20%程度と言われています。

2つ目の共通点は、「元本保証」ということです。

投資とは、未来の利益を得るために資金を投じることです。未来なんて正確に予測することは誰にもできません。極端な話、数日後に巨大な隕石が地球に衝突して、全人類が死滅することだって0%ではない訳です。投資である以上、元本保証はあり得ません。元本保証と言われたら、詐欺を疑いましょう。

3つ目の共通点は、厳しい「出金制限」です。

ポンジ・スキームは、簡単に言えば自転車操業ですから、出資金を短期間で引き上げられたら配当を出すことができなくなってしまいます。そこで、出資してから一定期間出金できない制限期間があったり、短期間で出金する場合は利率が下がったり、高額な解約手数料がかかるなど、さまざまな出金制限をかけてきます。出金に関して厳しい制限がある場合は、詐欺を疑いましょう。

4つ目の共通点は、「金融商品取引業の登録が行われていない」ことです。

日本では、無登録で金融商品取引業を行うことは違法であり、罰則があります。金融商品取引業者は「関東財務局登録会社等一覧」で確認できます。 また、金融商品取引業者等については、登録を行った財務局(本局)で、商号、役員の氏名、営業所の所在地等を記載した「登録簿」の閲覧(無料)ができます。登録がされていない場合は、詐欺を疑いましょう。というか詐欺です。ただし、これはポンジスキームに限りません。

他にも、配当金に対する税金の説明がなかったり、海外で運用する、などは詐欺を疑いましょう。

ポンジスキームの共通点
  1. 年率10%超えの安定的な利益を謳っている
  2. 元本保証を謳っている
  3. 厳しい出金制限がかけられている

この3つのうち、複数に該当するようであれば、ポンジスキームの可能性が高いです。

特に1は、単独でもほぼポンジだと思ってます。個人的には。

社畜
社畜

ポンジスキームだと気づいたら、絶対に手を出してはいけません。

高い配当だけ貰って、飛ぶ前に元本を引き出す、なんて考える人もいますが、上手くいく保証なんてありません。

奥さま
奥さま

リスクにリターンが見合ってないね。

仮に上手くいっても、被害者のことを考えると喜べないしね。

詐欺を見抜いて自分の資産を守り抜けるように、しっかりと知識武装することが大切です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました